「SNSは一応やっているが、これが何の役に立っているのか分からない」

投稿は続いている。フォロワー数もエンゲージメント率も見ている。それでも、その数字が伸びて自社の何が良くなるのかを説明できる人がいない。複数の部署や店舗がそれぞれアカウントを持っている企業では、この状態がさらに複雑になります。

原因は運用の巧拙ではありません。SNSが何のためにあるのかが定義されていないことです。

目的が決まっていないと何が起きるか

担当者が何を目指せばいいか分からない
フォロワーを増やせばいいのか、問い合わせにつなげればいいのか、採用の応募を増やせばいいのか。指示がないまま「とにかく投稿してください」と言われれば、担当者は投稿すること自体を目標にします。

成果を評価できない
フォロワーが1,000人増えたとして、それが成功なのか失敗なのかを判断する基準がありません。評価できなければ、改善もできません。

打ち手が非本質的になる
数字を上げること自体が目的になると、プレゼントキャンペーンやアルゴリズムへの最適化といった、手段の話に流れます。景品目当てのフォロワーが1万人増えても、事業には何も残りません。

複数アカウントで方針がばらつく
部署や店舗ごとに担当者が個別に判断するため、投稿のトーンも品質もばらばらになります。会社としてどう見られたいのかが定まっていないので、統一のしようがありません。

フォロワー数が指標にならない理由

フォロワー数を主要な評価指標にすると、2つの問題が起きます。

予算があれば増やせる

広告予算の大きい部署や店舗であれば、フォロワーは増やせます。担当者のスキルではなく、予算の差で数字が決まる。その担当者が予算の少ない部署に異動すれば、同じ数字は出ません。

つまりフォロワー数は、担当者の力量を測る指標としても、施策の有効性を測る指標としても機能しません。

ターゲット外が増えても意味がない

話題性のある投稿で幅広くリーチすれば、フォロワーは増えます。しかしその中に自社の顧客になり得る人が含まれていなければ、事業への貢献はゼロです。

さらに、ターゲット外のフォロワーが増えることで、既存のフォロワーが離れることもあります。「この会社らしくない」と感じた層が離脱すれば、見かけの数字は増えていても、実質的にはマイナスです。

目的を定義する手順

ステップ1:事業のどこに効かせたいかを決める

SNSで達成したいことを、事業の言葉で定めます。

  • 新規顧客への認知を広げたい
  • 既存顧客との接点を増やし、再購入につなげたい
  • 採用の応募を増やしたい
  • 商品やサービスへの理解を深め、問い合わせの質を上げたい

複数を挙げても構いませんが、優先順位はつけてください。すべてを同時に追うと、投稿の方向性が定まりません。

ステップ2:顧客がその媒体をどう使っているかを確認する

自社の都合ではなく、顧客側の使い方から考えます。

Instagramは日常の中でどう見られているのか。X(旧Twitter)で情報を探すとき、人は何を知りたいのか。LinkedInで企業アカウントに何を期待するのか。

媒体ごとに受け取られ方が違うため、同じ内容を全媒体に流しても効果は出ません。顧客がその媒体で何を求めているかに合わせる必要があります。

ステップ3:自社にとっての役割を一文で書く

ステップ1と2を踏まえて、SNSの役割を一文で定義します。

「既存のお客様に、来店の理由をつくり続ける場」
「サービスの使い方を具体的に伝え、検討の後押しをする場」
「働いている人の様子を伝え、応募のハードルを下げる場」

この一文が、以降のすべての判断基準になります。投稿の内容に迷ったとき、この定義に照らして決められる状態が目標です。

評価基準のつくり方

目的が定まったら、それを測る基準を作ります。

事業目標との接続を確認する

見るべき指標は、目的によって変わります。

目的見る指標
新規認知リーチ数、新規フォロワーの属性
再購入の促進投稿経由の来店・購入、既存顧客の反応率
採用プロフィールから採用ページへの遷移、応募時の認知経路
検討の後押し保存数、プロフィールクリック、問い合わせ時の言及

いずれの場合も、フォロワー数そのものは主要指標になりません。フォロワーは手段であって、目的ではないためです。

複数アカウントを運用している場合

部署や店舗ごとにアカウントがある場合、全社で共通の評価基準が必要です。

なぜ共通基準が要るのか

基準がなければ、各アカウントの状況を比較できません。うまくいっているアカウントを特定できず、その要因を他に展開することもできない。担当者が異動すれば、そこまでの蓄積も消えます。

基準の作り方

評価項目を複数設定し、それぞれを段階で評価する形が実務的です。

  • 投稿の頻度と継続性
  • 目的に沿った内容になっているか
  • ターゲット層の反応が得られているか
  • 事業指標への貢献(来店、問い合わせなど)
  • 改善のサイクルが回っているか

各項目を3〜5段階で評価し、月次で記録します。点数そのものより、前月と比べてどこが変わったかを見ることに意味があります。

担当者自身が判断できる形にする

評価基準は、上から管理するためのものではありません。担当者が自分で「今月はここが弱かった」と気づき、次の改善につなげるための道具です。

そのため、項目ごとに「どういう状態なら何点か」を具体的に言葉で定義しておく必要があります。定義が曖昧だと、評価する人によって点が変わり、基準として機能しません。

社内に浸透させる

基準を作っても、共有されなければ運用は変わりません。

優良アカウントの運用を言語化する

社内で成果が出ているアカウントがあれば、何をやっているのかを分解します。

投稿の企画をどう考えているか、写真をどう撮っているか、コメントにどう返しているか。担当者本人が無意識にやっていることを、ヒアリングで引き出して言葉にします。

この作業をすると、感覚でやっていたことが手順になります。手順になれば、他のアカウントでも再現できます。

定期的に共有の場を設ける

資料を配るだけでは浸透しません。定期的に集まって、成功例と失敗例を共有する場が必要です。

参加対象は運用担当者だけに限らないほうが効果的です。売場や部署の責任者、管理職も含めることで、「SNSは担当者だけの仕事ではない」という認識が広がります。

異動しても引き継げる状態にする

企業である以上、担当者は変わります。基準と手順が文書化されていれば、次の担当者が同じ水準で引き継げます。

逆に、担当者の個人的なセンスに依存した運用は、その人がいなくなった時点で振り出しに戻ります。

進め方の順序

  1. SNSを事業のどの役割に位置づけるかを定義する
  2. 顧客がその媒体をどう使っているかを確認する
  3. 目的に沿った評価指標を決める
  4. 複数アカウントがあれば、共通の評価基準を設計する
  5. 月次の振り返りで見る項目を揃える
  6. 社内の優良アカウントの運用を言語化して共有する
  7. 定期的な共有の場を設ける

投稿の内容や頻度の話は、ここまで整った後に出てきます。多くの企業が、この順序を逆から始めています。

まとめ

  • SNS運用が機能しない原因は、目的が定義されていないこと
  • フォロワー数は予算で動くため、施策の有効性も担当者の力量も測れない
  • ターゲット外のフォロワーが増えても、事業への貢献はない
  • 目的は「事業のどこに効かせたいか」から定め、一文で書き出す
  • 複数アカウントがある場合、全社共通の評価基準が不可欠
  • 評価基準は管理のためではなく、担当者が自分で改善できるようにするためのもの
  • 優良アカウントの運用を言語化すれば、他に展開できる

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