「応募が来ないので、媒体を変えようと思っている」
採用のご相談で最も多いのがこれです。そして多くの場合、媒体を変えても結果は変わりません。半年後に同じ相談をいただくことになります。
理由は単純で、媒体が原因ではなかったからです。採用がうまくいかない状態には複数の異なる原因があり、それぞれ打ち手が違います。原因を特定しないまま手段だけ変えても、費用が積み上がるだけです。
「採用できない」は4種類ある
採用がうまくいかないという状態は、実際には4つの異なる問題に分かれます。
| 状態 | 何が起きているか |
|---|---|
| 応募が来ない | 求人がターゲットに届いていない、または見ても応募されない |
| 応募は来るが違う | 母集団は形成できているが、要件と合致しない |
| 選考中に離脱する | 面接や書類選考の過程で候補者が抜けていく |
| 内定を辞退される | 最後まで進むが、他社に決まる |
この4つは症状が違うだけでなく、原因も対策も異なります。にもかかわらず、すべてが「採用がうまくいかない」という一言でまとめられ、媒体の変更という同じ処方が出されている。これが最も多いパターンです。
まず、自社がどれに該当するかを確認します。感覚ではなく、数字で確認する必要があります。
数字で位置を特定する
必要な数字は5つだけです。直近1年の採用活動について、以下を集計します。
① 応募数
② 書類選考の通過数
③ 面接実施数
④ 内定数
⑤ 入社数
この5つから、各段階の通過率が算出できます。
見るべき通過率
書類通過率(②÷①)
一般的には30〜50%程度です。極端に低い場合、求人の内容と要件が合っていません。求人票が広く書かれすぎているか、そもそも要件が市場に存在しない水準になっています。
面接実施率(③÷②)
書類は通ったが面接に至らない場合、連絡の速度や日程調整に問題があります。応募から初回連絡までの日数を確認してください。
内定率(④÷③)
面接まで来た人材が採用に至らない場合、要件の解像度が低い可能性があります。面接官によって評価が割れているなら、基準が共有されていません。
内定承諾率(⑤÷④)
一般に75%前後、つまり4人に1人は辞退すると考えられています。これを大きく下回る場合、条件面か、選考中に候補者が抱いた印象に原因があります。
数字がない場合
この5つを集計できない企業は少なくありません。その場合、まず記録を取るところから始めます。次の採用で通過率が分かれば、その次からは打ち手を選べます。
記録がないまま媒体を変えるのは、原因不明のまま薬を変えるのと同じです。効いたかどうかも判定できません。
応募が来ない場合
最も多い相談ですが、原因は3つに分かれます。
原因A:求人が届いていない
掲載しているだけで、ターゲットが見ていない状態です。媒体とターゲットが合っていない場合はここに該当します。
確認方法は、求人の閲覧数(PV)です。多くの媒体では管理画面から確認できます。PVが極端に少なければ、届いていません。この場合に限り、媒体の変更や掲載枠の見直しが有効です。
原因B:見られているが応募されない
PVはあるが応募がない場合、求人票の内容に問題があります。媒体を変えても、同じ求人票を載せる限り結果は同じです。
よくあるのは、次のような書き方です。
- 「風通しの良い職場です」「アットホームな雰囲気」といった、どの企業でも書ける表現
- 業務内容が「営業全般」「事務業務」など、具体性を欠く記載
- 求める人物像が「コミュニケーション能力の高い方」「主体的に動ける方」
- 給与が「経験・能力を考慮の上、決定」
読み手は複数の求人を並べて比較しています。抽象的な表現だけの求人は、比較の対象にすら入りません。
原因C:条件が市場と合っていない
同じ職種・同じエリアの他社求人を10件見てください。給与、休日、勤務条件を並べたとき、自社の位置が下位にあるなら、求人票をいくら改善しても限界があります。
この場合の選択肢は、条件を上げるか、条件が低くても選ばれる理由をつくるかのどちらかです。後者には時間がかかります。急ぎであれば、条件を見直すほうが早く解決します。
応募は来るが要件と合わない場合
母集団は形成できているのに、選考に進められる人材がいない。この場合、問題は求人票ではなく要件定義にあります。
要件が言語化されていない
「即戦力が欲しい」「優秀な人」という表現のまま採用活動が始まっているケースです。この状態では、応募者を評価する基準が面接官の主観になります。
必要なのは、次の3つを分けて定義することです。
必須要件:これがなければ業務が成立しない条件
歓迎要件:あれば望ましいが、なくても採用する条件
不問:評価に含めない条件
多くの企業では、この3つが混ざっています。結果として、必須ではない条件で候補者を落としたり、逆に必須要件を満たさない人材を「人柄が良いから」と通してしまいます。
要件が市場に存在しない
必須要件を並べた結果、その人材が市場にほとんど存在しないということがあります。
「30代前半」「同業界で5年以上の経験」「マネジメント経験あり」「年収500万円以内」。個々の条件は妥当に見えても、すべてを満たす人材は極めて少ない。しかもそうした人材は現職で評価されており、転職市場に出てきません。
要件を決めたら、その条件で検索したときに何人ヒットするかを確認してください。人材紹介会社や媒体の担当者に聞けば、おおよその母数は教えてもらえます。母数が二桁前半であれば、その採用は極めて困難です。
選考中に離脱される場合
応募から内定までの期間が長いほど、候補者は他社に流れます。中途採用における応募から内定までの目安は2週間程度とされています。
確認すべき所要日数
| 工程 | 目安 |
|---|---|
| 応募から初回連絡 | 24時間以内 |
| 書類選考の結果通知 | 3営業日以内 |
| 面接日程の調整 | 1週間以内に実施 |
| 面接から次の連絡 | 3営業日以内 |
| 応募から内定まで | 2週間程度 |
候補者は複数社に同時に応募しています。連絡が3日空けば、その間に他社の選考が進みます。
この工程で最も詰まりやすいのが、社内の日程調整です。面接官のスケジュールが埋まっていて2週間先しか空きがない、という状況は珍しくありません。採用を優先事項に置いていない組織では、必ずここで負けます。
面接回数を減らす
選考が3回、4回と続くと、その分だけ日数がかかります。応募の段階で面接回数が示されていれば、それ自体が応募のハードルにもなります。
一次と二次を統合できないか、役員面接は本当に必要か。2回で完結させられるケースが多くあります。
面接での印象
辞退理由として実際に多いのが、面接時の対応です。高圧的な質問、一方的に話す面接官、志望動機を執拗に問う進め方。候補者は面接を通じて、その会社で働く自分を想像しています。
面接は選考の場であると同時に、候補者から選ばれる場でもあります。
内定を辞退される場合
ここまで来て辞退される場合、原因は条件か、意思決定の材料不足です。
条件が競合に負けている
他社と並行して選考を受けていれば、条件は比較されます。給与だけでなく、勤務地、リモートの可否、残業時間なども比較対象です。
内定を出す前に、その候補者が他にどこを受けているかを確認しておくと、条件提示の判断材料になります。
入社後のイメージが持てない
選考の過程で、配属先の状況、一緒に働くメンバー、期待される役割が伝わっていない場合、候補者は判断できません。判断できないまま期限が来れば、より情報の多い会社を選びます。
内定前に現場社員との面談を設定する、実際の職場を見てもらうといった対応で、辞退率は変わります。
打ち手の優先順位
切り分けができたら、対策には順序があります。
第一に、要件定義を確認する。
すべての工程の前提になります。ここが曖昧なままでは、求人票も面接基準もつくれません。
第二に、選考プロセスの日数を短縮する。
費用がかからず、効果が出るのが最も早い改善です。社内の合意だけで実行できます。
第三に、求人票を書き直す。
要件が定まっていれば、書くべき内容は決まります。抽象表現を具体に置き換えるだけで、応募の質が変わります。
第四に、チャネルを見直す。
ここまで整えたうえで、それでもターゲットに届いていないなら、初めて媒体の変更を検討します。
多くの企業が第四から着手しています。順序が逆であるため、費用をかけても改善しません。
まとめ
- 「採用できない」は4種類あり、それぞれ原因も対策も異なる
- どこで詰まっているかは、5つの数字(応募・書類通過・面接・内定・入社)で特定できる
- 応募が来ない原因は、届いていない/見られても応募されない/条件が市場と合わない、の3つに分かれる
- 要件が言語化されていなければ、求人票も面接基準もつくれない
- 選考の所要日数は、費用をかけずに改善できる最優先の項目
- 媒体の変更は、要件・プロセス・求人票を整えたあとの最後の手段
より詳しい資料
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